ガラクタ達の住処
結局、兄弟達はシティへと戻って行った。 答えを出せぬまま、まだ、この街に残ると言った僕を気遣う様にして。 「それでも、気が向いたら…ここを訪ねてくれれば良い」 一番上の兄さんは、僕に住所を書いた紙と、 それから財布にあった紙幣を僕に全部握らせてくれて言った。 多分、兄さんは…僕がまだ母さんの死を受け入れられないで 混乱していると思っているんだろう。 でも、そうかもしれないけれど、そうじゃない。 結局、師匠が言った通り、僕は自由になったのかもしれないけれど。 僕はその自由の遣い所を知らなかった。 母さんがいて、師匠がいる世界が、 僕にとって居心地が良かったから。 それ以外は、何もいらなかった。 いくら、この街が、生きる価値のないガラクタ達の住処だったとしても、 僕は、この場所が、この町が、やっぱり、好きだったから。 考えれば考えるほど、気持ちは絡まり考えは座礁に乗り上げる。 いっそこのまま、 被虐種として、怯えながら、 しかし少しの身を守る術を持って生きていく。 それでも、いいのかもしれない。 そうして、その日は、いつの間にか寝てしまっていた。 母さんの、ベッドで。 |
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