きっと僕は、そうしたかったから、
母さんも、師匠も、2人とも揃いの紋章をつけた服を着込んでいる。 知らない人も何人か写っていた。 けれど、これが何の写真かは、分った。 写真に写る彼等は、政府の人たちと、それから大統領だ。 この紋が政府を表す事も母さんに教えてもらっていたし、 大統領の顔も、母さんが持っていた本に載っていたから。 師匠も、政府の役人?…だったんだ。 大して驚きはしなかった。 寧ろ、この街に逃げ込んできた母さんを匿ったのも説明がいく。 師匠がこんな、被虐街に住んでいるのは… 何か大きなミスをしたからだろうか。 ぼんやりと、そう思う。 そして考えながら、自分が食い入るように、 その写真を見つめている事に気がつく。 母さんが、僕を利用して、…送り込もうとしていた…場所。 けれど僕は、その事実を聞いても、内心ショックじゃなかった。 だって、僕が一番望んでいたことは、 「クロウ?いるのか?」 「し、師匠!」 慌てるように写真をポケットにねじ込めば、 正面入り口のドアを開けて入ってくる師匠の姿が見えた。 「何だ?また悪さしてたのか?」 「ま、またじゃないですよ!その、ちょっと、朝食を拝借しようとして、」 机を飛び越え師匠の方に行けば拳骨が来るだろう。 そう予測し、師匠の机の横で立ち往生すれば、 師匠は軽くため息をつき、こいこい、と手招きをする。 怒られるのかと思ったけれど、どうやら違うらしい。 師匠のベルトには何かの束が抱えられていた。 「何ですか?それ?」 「あー…ほら、色々手続きとか、裏の、まぁ知り合いに作ってもらったのとか、」 相変わらず主語を言わない師匠の言葉を解するのは難解だ。 放り投げてくるので受け取れば、そこには何やら几帳面な字面が並んでいる。 「これ、何ですか…?」 よくよく見れば、それぞれの紙に生年月日や一親等の情報などが書かれている。 「ん?お前、ここを出て行くんだろ? 取りあえずお前っぽい経歴の戸籍を、幾つか偽造してきたから」 「ぎ、偽造って!!それに僕はここを出て行くなんて一言も…!」 「出て行かないのか?この街で、一生、腐ったように過ごすのか?」 静かに問われ、僕は黙り込む。 師匠は、僕が言う前から、僕が言いたいことを全部分ってるかのようだ。 けれど、 「師匠、僕も、師匠に言いたいことがあるんです」 言ってしまえば、師匠はどんな顔をするだろう。 それでも、母さんが死んだ時も、 師匠に一般市民として街で暮らせといわれた時も、 姉さん達に一緒にシティで暮らそうといわれた時も、 ずっとずっとわだかまりがあった。 そう、それは、きっと僕が、そうしたかったから、 |
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