それでもきっと、今日、僕等は何かの弾みで歩いていく 7



考えるのが面倒なんじゃない。説明するのが面倒なんだ。
つまり、あれだ。気合で理解するんだ

 
「ま、それはさて置き、だ。
取りあえず面倒なんで纏めるが。俺のやってる事に大概の間違いは無い。
その中から適当な住民データ選んで、そしてお前はもう家に帰って、
それで荷物を纏めて明日に備える。
それで仕舞だ」
くい、と顎で先ほどの書類を指しながら、師匠は最後のパンを飲み込む。

……面倒の一言で、思い切りはしょられた気がする。

「師匠…僕の言いたい事…師匠に何一つ伝わってない気がするんですが、」
「ん?そりゃ、伝わるも何も、
最初からお前の考えなんて手に取るように解る訳だし」
「そうじゃなくて!」
ちらり、と目の隅に書類を留め、

「僕の望みは…僕の口から、はっきりと言いませんでしたが、僕は、
……政府に行きたいんです」
真摯に、師匠を見る。

「……あのな……お前、何でそう堂々巡りなんだ…」
「堂々巡り、って」
「いきなりシティに行きました。
はい、政府に入ります!…ってんな事出来るわけないだろ…」
「分ってますけど、でも、……わぷっ……」
唐突に書類の束を顔に投げつけられる。

「口で言っても堂々巡りだ。
取りあえずその書類を読んで、で、勝手に理解しろ」

ペシ、

手の如く、の師匠のベルトに出口まで飛ばされると、
乱暴に扉が閉じられる。
「…って、師匠!!」
慌ててドアを叩くが、暫くして聞こえてきたのは…
師匠の寝息。

「………一人で勝手に展開進めないでくださいよ……。
あぁ、きっと分らないの僕だけじゃない。大半」
自分でも訳の分らない独り言を呟き、そして一緒に外に出された資料の束を見る。

……取りあえず、これを読む事には…前に進めないか。

まんじりしない気持ちで、僕は師匠の家を後にした。
 



――― 7 ―――


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