終焉の日 15



笑顔を灯し

かつてそうあった様に

忌み嫌っていた名を

血の様に浴び

兵器と

虐殺者と

呼ばれ

だが

心は否定しても

身体に染み付いたそれは消えない

嫌っていた

知っていた

怯えていた

喜んでいた

闘う事に

殺し合う事に


さぁ

死の戦場へ

行きましょう






「……確認、コード30810、---セッション完了、
ICBMピースキーパー、確認、M-26 
フラグメンテーショングレネード、アサルトライフルAn−94、
確認、RPzB54/1、装着、和泉守兼定、装備………」

抑揚のない声が静かな中、響く。

人通りの少ないその路地に、私と、
そして黒い怪物は対峙していた。
私の顔から、人としての生気が、血の気が引いて行くのを、
じっと、黙ってみている。

シュー…シュー…時折洩れる息。或いは蒸気。


戦いの前の静けさ。


「………確認、終了。之より……戦闘体勢に入る」

兵器の、政府時代の名残を持つ甲冑が身を包む。

「目標、前方2時に確認、未確認、大型兵器、確認、……」

敵は、笑う。
私も、嗤った。

「3-11、戦闘開始」

一個の、その兵器は、ぐん、と上昇し、

そして、一気に下降した。




ほんの、少し前なのに、
随分と、昔な気がした。

かつて、この弾丸は、想いの人に牙を向け、
また、愛した人に剣を向けた。

過去が、まるで、数十年前の事の様に思える。
戦争は終わり、二度と、私は兵器として、
生きれないと思った。

でも、違う。

これは性だ。

闘う事に、自然と歓喜を感じる。

そう、だから、




そして私は、ゆっくりと目を開く。
眼下には、先程の、鉛の玉の猛攻に耐えた、
黒き屈強な身体が目に映る。

面白い…そうでなければ…

思考は、人のソレより恐らく、機械のソレ。
闘う事に、純粋に喜びを見出し。
そしてその感情は止まらず。

私は、その好敵手に、再び失速し、
そして加速と共に攻撃を開始した。


――― 15 ―――


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