「……確認、コード30810、---セッション完了、
ICBMピースキーパー、確認、M-26
フラグメンテーショングレネード、アサルトライフルAn−94、
確認、RPzB54/1、装着、和泉守兼定、装備………」
抑揚のない声が静かな中、響く。
人通りの少ないその路地に、私と、
そして黒い怪物は対峙していた。
私の顔から、人としての生気が、血の気が引いて行くのを、
じっと、黙ってみている。
シュー…シュー…時折洩れる息。或いは蒸気。
戦いの前の静けさ。
「………確認、終了。之より……戦闘体勢に入る」
兵器の、政府時代の名残を持つ甲冑が身を包む。
「目標、前方2時に確認、未確認、大型兵器、確認、……」
敵は、笑う。
私も、嗤った。
「3-11、戦闘開始」
一個の、その兵器は、ぐん、と上昇し、
そして、一気に下降した。
ほんの、少し前なのに、
随分と、昔な気がした。
かつて、この弾丸は、想いの人に牙を向け、
また、愛した人に剣を向けた。
過去が、まるで、数十年前の事の様に思える。
戦争は終わり、二度と、私は兵器として、
生きれないと思った。
でも、違う。
これは性だ。
闘う事に、自然と歓喜を感じる。
そう、だから、
そして私は、ゆっくりと目を開く。
眼下には、先程の、鉛の玉の猛攻に耐えた、
黒き屈強な身体が目に映る。
面白い…そうでなければ…
思考は、人のソレより恐らく、機械のソレ。
闘う事に、純粋に喜びを見出し。
そしてその感情は止まらず。
私は、その好敵手に、再び失速し、
そして加速と共に攻撃を開始した。
――― 15 ―――