終焉の日 16



よく、
こんな会話をするよね。

何もしなくて後悔するのと、
精一杯やって後悔するのと、
どっちがいい?

やっぱり、
精一杯やったほうが、
やらなかった時より、
ずっといいよね。

ほら、
好きな人に、
告白しないで終るより、
思い切って、
勇気出して、
そして玉砕しちゃった方が、
ずっと、
後悔しないよね。


本当に、
そうだよね。



でも、
私は、
そんなありきたりな答えなんて、
ほしくない。


やるからには、
精一杯やるからには、
後悔なんてしない。

精一杯やるから、
必ず、
勝つんだ。






ダダダダダダダダダ

「いけっ!!!!」
何度目かの連撃。

奴の機体はビクともしない。
黒い身体は甲冑のソレの如く堅く、
弾丸にも殆どダメージを受けた様子を見せない。

…どんな強固な防御なんだ…

僅かに歯噛みし、しかし止まっている暇は無い。
同じ様に、奴も私に攻撃を繰り出す。

ダダダダダダダ

「っ……」
紙一重に、私はその弾丸の、
地から天へと繰り出される攻撃を掻い潜る。

…私と、同等の弾丸を。

やはり、そうなのだ。
奴の戦闘能力は私のソレを基にしている。
あの甲冑とか、巨躯は…恐らく、
製作者の意図として組み込まれたのだろう。
厄介な敵だ。

…でも、どんなに堅くでも、必ず綻びはある。
…その一点を狙うのみ…!

「セイっ!!」
再び繰り出す弾丸。

殆ど無防備のまま、奴はその弾丸を浴びる。
…一箇所、強固に両の腕をクロスさせ護る場所
…胸の中央部の黒い球体を除いて。
恐らくあそこに一撃を叩き込めば、奴は倒せる筈。
だが、どれだけ攻撃を浴びせても隙を中々見せてはくれない。
…なら、綻びが、見つかるまで攻撃を繰り返すのみ。

「Target…RockOn……」

そう、どんな強固な壁も、鎧も、一点だけを狙えば……

「Magic Laser………Fire!!」

穴は、必ず空く!


一斉に、雨のようにレーザーが降り注ぐ。
その猛攻に、
眼下は一瞬にして濛々と霧とも蒸気ともつかぬ煙が立ち上げる。

チャンスは、一瞬。

「Magic Laser……Wait For Here……」

背に装着されていたレーザー砲は一時私から離脱する。
同時に、私は羽をたたみ、一気に地に降下する。

空に放置されたままの、
無限に繰り出す己のレーザーを掻い潜り、
そして、狙うは、その一点……


私は、息を吸い、吐く。

一度だけ。

「兼定……いくよ……」
私は背丈ほどもあるその長剣を引き抜いた。

眼下に見える化物。
相変わらず、
強固に己が黒い球体を護るべく
両手を胸の辺りでクロスさせている。

だが…狙う綻びはソコではない。
……そう、屈指の鎧に護られていても、
ソコには、隙間が、必ず出来る。

剣を、ぐん、と持ち替え。
地面に、あの化物に、自分の身体が落ちていく。


狙え。
あの隙間を。
一瞬の、
一瞬で、
決まる……


「いっけぇええええ!」


私は、その化物の、私を見据えていた瞳に、目に、
思い切り刀を突き立てる。

ズブ…ズズズッズズズ………

刀は、スブスブと、瞳の中に、吸い込まれるように、
のめり込んで行き………


「グ…グギャァアアアアアアア!!」


私は初めて、その醜い化物の、悲鳴を、
聞いた。


――― 16 ―――


Top 小説Top Next
inserted by FC2 system