終焉の日 21



生きている、

そう感じていた


どうしてか不意に、

そう思った




こうして自分の足で、

走っている自分がいる




それだけなのに



世界が

変わっていく




私が

変わってゆく






「ッ………はぁッ……」


やっと着いた。
私があの黒いプラズマの球体を持つ
…あの化物と戦った場所。

無人のそこはしかし、まだ瓦礫の山があちこちに見え、
あの戦闘の酷さを物語っていた。


「…あそこだ」
私は瓦礫の一つに駆け寄る。
屋根や壁が崩れ、地面が見えないほど覆いかぶさっている。

「………」
大丈夫。
きっと、大丈夫。

このガレキの下に、あの女の人はいない。
私に、魔法の言葉をくれた、あの女の人はいない。

それでも…

ガラン、
バタン、
私は両手で、瓦礫をどけ始める。

いる筈は無い。
きっと助かっている。

でも、
でも、

怖い


心は怯えながらも、手は止まらない。
お願い
いないで、
だれも、


そうしてガレキが随分と取り除かれ
そして、


「ッ!!」
手が、

あ、あ、ああ


キーン、と耳鳴りがする。

腕が見える。
白い、腕。

私は、手を伸ばす。
目は、背けられない。

そして、






コツン


爪が、腕にあたる。



コツン?


「…………あ、まさか!!」
ぐい、と私はその腕を引き上げる。

それは、…恐らく……

そう。





マネキンの腕。


……………………………………

…………………

「よか…った………」
マネキンの腕を掴んだまま、私はへたり込む。

全身からは汗がどっと吹き出、
背中は寒さを思い出し冷たくなる。
知らず知らずのうちに、涙が落ちる。
泣きながら、そして笑っていた。

「よかった……よかった、……」
きっと、助かったんだ。

きっと、いつか、町のどこかで会える。
いや、たとえ会えなくたって、







………会えるんだと、いつか会えるんだと、
信じていよう。



私は、噛み締めるように、立ち上がった。


――― 21 ―――


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