同じ道を、あの時も通った。
そう、走って、走って、この場所に着いて、
私はあの化物と闘った。
道すがら、その広場の前を通り、自然と歩みが遅くなる。
そして、あの人に出会った。
私に、魔法の言葉をくれた、人。
今は、行方不明で、生きているかも判らないで、
酷い事を沢山言ってしまって、でも、……とても、優しい人で。
そうだ。
そんな都合のいい話はないかもしれないけど、
もしかしたら、また、この広場でばったりと会えるかもしれない。
不意にそんな希望が沸き、辺りを見回す。
まばらに行き交う人々。
あの戦いで崩壊した家々は殆どが元通りになっており、
……しかし、
現実はそんなに都合が良くない。
……あの人は、どこにもいない。
「……時間に、…遅れる…。行かなくっちゃ……」
そう呟き、視線を自分の進行方向に向け、
「………え…?」
その先の角を曲がる、スカートの、裾。
あの人と同じ、オレンジ色のフリルの……
まさか…まさか!
私は思わず駆け出す。
鼓動が、早くなる。
あの角を曲がれば……
ドン!!
「キャッ…」
「ッ!」
出会い頭、漫画の展開の様に誰かとぶつかり、私はよろめく。
「おっと……大丈夫か姫さん?」
声と共に、誰かが私を引っ張ってくれる、
「…ドルヒさん……」
いつも通りの少しニヤけたような彼の顔がそこにあった。
「へぇ…兵器って言うからにはすっげぇ重いと思ってたけど…意外と」
「な、何ですか…!」
思わずムッとした私の表情にドルヒさんは苦笑する。
「いや、それはまぁいいんだけどな…。
そんなに急いでどうしたんだ?」
「……あ」
そこの言葉に私は慌てて道の向こう側を見渡す。
……案の定、そこには、私が探していた人の影はなかった。
…ただの、気のせいだったようだ。
「誰か捜していたのか?」
「……えぇ、…し、知り合いなんですけど…その、」
「オレンジ色のフリルの?」
「え…?何で…」
「いや…何でというか、俺と姫さんがぶつかった時、
そのオレンジの人がこっち見て笑ってたからな
…なんでだろうと、あ、おい?」
「ドルヒさん、え、ええと、ありがとうございます!」
そこ言葉を聞くや否や、私は駆け出していた。
……やっぱり、あの人だ。…生きていた。
私は辺りを見回し、何度も視線を泳がす。
だが、結局彼女の姿を捕らえる事はなかった。
「………」
でも、
…それだけでも分かっていたんだ。
…あの人は生きていた。
…良かった…。
…だから、彼女とはいつか会える。
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