それでもきっと、今日、僕等は何かの弾みで歩いていく 3



収集家の部屋って、物凄く汚いか、物凄く几帳面に整理されているか、その2択
いつもの様に目を覚ます。


午前6時。
まだ薄暗い外を見れば、いつも通りの光景。
清掃なんか一度もされていない通り。
誰のものか分らない、乾いた手が隅に落ちているのが目に付く。
少しだけ顔をしかめ、そしていつも通り起き上がる。

そして違和感に気がつく。
何で母さんのベッドに…?

………あぁ、そうか。
もう、母さんはいないんだった。

思い出しても、しかし涙は出なかった。
それよりもしなければ無い事は、沢山あるから。

テキパキと服に着替え、外の様子を確認。
…無論、こんな朝早くから被虐者街を歩く奇異な人はいない。
それでも、用心に越したことはない。

護身用として全然役に立ちそうにも無い、
錆びた折りたたみナイフを胸に忍ばせると、
そのまままっすぐ、目的地に向かった。







「お早うございます」
いつも通り裏口から、すぅ、と室内に入る。
今日は部屋に酒臭い臭いはなかった。

「師匠?」
返事が無い。
どこかに出かけているんだろうか?

「師匠ー?」
相変わらずガラクタの多い家だ。
仕方が無いから、なるべく物を踏まないように師匠の部屋に向かう。
昼時だったら掃除も出来るのだが、
勝手に電気をつけたら怒られるし、
掃除したらしたで、
「あれがない、これがない」と怒鳴られるのがオチだ。

そう思っている間に、ゴミを掻き分けようやく師匠の使っている机の前に辿り付く。

やっぱり師匠はいなかった。

困ったな…。

やはり勝手に射撃場を使うのは駄目だろう。
しかし来てしまったのに帰るのもなんだし、
朝食を頂く位、許されるだろう。

勝手にそう判断し、机のまた向こう側に行こうと、机に手を掛ける。
「…って…うわっぷ……」
手を掛けた場所は、埃の巣窟だったらしい。
咳き込みながら僕は右手をばたばたさせれる。

…自分の机くらい…掃除して下さい…
内心悪態を付きながら取りあえず積もった埃を適当に払っていく。
ここで物を壊したりしたら、もっと怒られるだろうけど。

「あ、」
思った矢先、埃と一緒に何かが落ちて僕は慌てた。

拾い上げたそれは、埃でかなり汚れて色質も落ちていたが…写真だった。
…はいはい。勝手に見たりしませんから。
そこにいない師匠に心の中で呟き、机の上に戻し、

………また、引き戻した。

写真の端に、映ったその人が、よく見知った人だったから。
……写真には、楽しそうに笑みを浮かべる、
師匠と、しぃだった頃の母さんが映っていた。


――― 3 ―――


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